珍魚落雁

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help リーダーに追加 RSS クリスマスローズ(side;K)【絶えずの炎 bX7】

<<   作成日時 : 2008/06/15 10:28   >>

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「ごめん…ほんとに…ごめん…」

 背中に したたりおちる彼の涙…
 私を抱きしめるたくましい腕が震えてる

 コーン…

 神々しいくらいに美しかった少年

 今
 こんなに 凛々しい青年になって…帰ってきた!

「いいの…こうして 逢えた…それだけで…」

「わけ…聞かない…の…?」

 だまって かぶりを振る。

 言えるものなら とうに言ってたでしょう?
 
 よほどのことがあったにちがいない。

 あんなにきれいな金髪 碧眼
 消してしまわなきゃ ならない…よほどのことが!

「あなたが ここにいてくれる。それだけで 十分…。」

 花橘の香りがする…優しい腕

 少しも変わらない…あの頃と

 あの頃
 この優しさにどれほど 癒されたか

 あのあと
 この思い出にどれほど 慰められたか

「ありがとう」

「…え?」

「コーンのおかげで 生きてこられた…の。ずっと…。」

 改めて その碧い眼を見つめる。

「本当に ありがとう コーン」

「キョーコ…!」

「…よかった…」

 その澄んだ碧眼から 目を離せない。

「私の大切な思い出の人と大好きな人が 同じ人で」

 いきなり
 大きく視界が反転した!

 …え?!

 背に感じるベッドの感触

 息苦しいくらいの…熱い口付け

「俺も うれしい…。」

 じっと 私を見つめながら ささやく。

「大切な初恋の女の子に逢えて…」

 え…!?

「そして…俺を選んでくれて」

「コーン…い、いえ、久遠」

「『蓮』…でいい。」

「で、でも…本名…」

「どっちも俺だ。それに…『蓮』のほうが、君に愛してもらえた男だ。」

「…蓮…」

「…入っても…いい?…君の…横に」

「…は?」

 な、なにを いまさら?
 いままで ずっと一緒に…!

「…『お兄ちゃん』…じゃなく…」

 …あ…

 きっと
 私は 真っ青になってしまったんだろう

 ふっ

 蓮は さみしそうに ほほえんだ。

「…ごめん…。馬鹿なこと言った。」

 優しく ほほに口付ける。

「疲れたろ?ゆっくりお休み。」

 すっと 私から離れていく。

「え?れ、蓮は…?」

 天蓋のカーテンあけて出て行こうとするから
 あわてて 呼び止めた!

「小さい城だけど 20部屋くらいはあるから。心配しないで。」

 そ、それの
 どこが『小さい』って!?
 
 …じゃなくて!!!

「い…」

 「いっしょに 寝てくれないんですか!?」

 そう言いかけた口 あわててふさいだ。
 
 もう もどれない…。

 ただただ 甘えて
 その胸の中に安らいで寝ていた…あの頃…には。

「じゃあ…お休み。」

 …でも…。

「蓮!」

「ん?」

「行かないで!」

 もう…耐えられない!

「…え?」

「一緒に…い…て…」
  
 ふりむいた蓮が そのままの姿勢で固まった。

「…キョー…コ?」

 確かめるように 私の目を見つめる。

「…もう…一人に…しないで…!」

 もう二度と
 あなたに会えないのかと 

 どんなに…心細かったか!
 
「キョーコ!」

 次の瞬間
 蓮の熱い腕の中に抱きしめられていた。
  
「もう…離れない…。」

 花橘の香りがする…優しい腕

「離さない…絶対に!」 

「蓮」

 ぎゅっとしがみついた

 今では
 すっかりたくましくなった その背中に

 遠く
 かすかに 鐘が鳴る

 ノートルダムの鐘の音

 外は きっと 凍えるような寒さ

 ―心泰く 身寧きは 是れ帰する処 ―

 私は見つけた

 やっと

 私の
 本当のふるさとを

 これから ずっと

 生涯 
 私が安らげる場所を

画像


  香炉峰下 新たに山居を卜し
  草堂初めて成り 偶たまたま東壁に題す

                       白居易

 日高くねむりたりて なお起くるにものうし
 小閣 ふすまを重ねて寒さをおそれず
 遺愛寺の鐘は枕をそばだてて聴き
 香炉峰の雪はすだれかかげて看る
 きょうろは すなわち これ名を逃るるの地
 司馬は なお 老いを送るの官たり
 心泰く身寧きは是れ帰する処
 故郷何ぞ独り長安にのみ在らんや



イラスト「冬姫牡丹とベル」(『十五夜』さまより)

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コメント(3件)

内 容 ニックネーム/日時
ここで 香炉峰の雪ですか?清少納言を思い出してしまいました。。。
蓮は キョーコちゃんのふるさとになったのですね。。。翌日は それこそ枕をそばだててノートルダムの鐘を聞き、天蓋の布を掲げて外の雪景色を見て、起きるのがもの憂いくらい、お布団の中で過ごしてしまうのでしょう。アツアツのふたりに 乾杯!
かっこう
2008/06/15 15:22
え、と・・・・・・。
なんか感無量で、どうコメントしたらいいかわかりません。
あと数話で終了ですよね?
あと一息!最後までがんばってくださいね。
楽しみにお待ちしています。
紗月
2008/06/15 22:45
かっこう様
 あいかわらず古典に造詣がお深い…。^-^;
 深く読み取っていただけて幸せです。

紗月様
 ありがとうございます。お気持ち、ひしひし伝わって参ります。
 はい。100話で終了予定です。^-^; もうちょいです。
 最後まで よろしくおつきあいくださいませ。 
ことりん
2008/06/16 22:30

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