珍魚落雁

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help リーダーに追加 RSS 続:お節嫌い(side:S)【絶えずの炎 bX2】

<<   作成日時 : 2008/05/31 01:21   >>

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「…そうか…。いってしもうたんか、キョーコちゃん。」

 受話器の向こう
 おふくろの沈んだ声が響く。

「…まぁ しゃあないな…。ねばるだけねばったんやけどなぁ…。」

「…責めない…のか?」

「元々、最初から 結果見えとった勝負やったしな!」

 おふくろは ずいぶんとさばさばした口調で言う。

「…え?」

「あのなぁ 松。」

 やれやれ…と ため息つきながら おふくろが続ける。

「女が口づけなんぞ許すんはな よほど心許しとらな でけへんことなんや!」

「っ?!」

「ほんまゆうたら…半年前…敦賀はんのキス 嫌がらんと受け入れてる キョーコちゃん見て わかっとった。
ああ。キョーコちゃんも…敦賀はんのこと 好いとるんやな…て。」

「あ…!あのとき!おふくろは!」

 『キョーコは そういう意味では 敦賀に惚れてない』って!!

「うちも 不思議でならんかったんやけど…キョーコちゃん本人は まるっきり自覚しとらんかったんや。
 そやから 今の内なら まだ ぜったいに間に合う!…て 思うたんやけどなぁ…。」

「…結局…無駄なあがきだった…ってわけ…か。オレ…。」

「…松…。」

「ピエロ…だよな…ホントに…。」
 
「そんなことない!むしろ、ここまで よう持ちこたえたもんや。敢闘賞やで!松!」

「…そんなの!ほとんど おふくろの功績…だ…!」

「…松…。」

 静かに おふくろがささやいた。

「大晦日の歌合戦終わったら…正月3日間は休みもらえるのやろ?京都で正月迎えよ。な?」

「…キョーコ…嫁…に つれて帰れない…のに…しきい…またいで いいの…か?」

「しゃあないわ!昔の人は よぉゆうた!馬鹿な子ほど、可愛い、てな!」

「バ…バカ…って!」

「お父はんも おいしい正月料理作って 待ってくれてるえ?」

「…3日間…お節責めかよ…。」

「ちゃんとカレーもつくったげます!ほんまに 旅館の息子のくせに!おにしめにマヨネーズかけるんやから!」

「そのほうが うまいんだよ!」

「お父はんの前でだけは やめといてな!昔 アンタに それやられて えろう落ち込んどったんやから!」

「…はいはい…」

「…なにはともあれ…今日は、はよう 床におはいり。もう 午前1時や。明日も、仕事…やろ?」

「…ああ…。」

画像


Thanks for your Life.
    Thanks for your Happiness.

 君の笑顔が 僕の幸せ

 君が笑ってくれるなら 僕はなんでもしてみせる

 君が生きてここにいる それだけで僕は幸せ
 君が幸せでいてくれるなら それが僕の最高の幸せ

Thanks for your Life.
Thanks for your Happiness.


 キョーコとの約束を守って マリア嬢に 歌を贈った。

 そこまで…が…オレの限界…だった。
 
 盛大な拍手に送られて
 ステージ袖に引っ込んだオレを

 待ちかまえていた古狸は
 強引に 連れ出して オレのマンションにまで連れてきた。

 客を放り出して…自ら 付き添って…。

 車中では…ひとことも 語らなかったが…。
 
 「ありがとうございました、送っていただいて…。」

 「不破君」

  機械的に
  おざなりな礼を言って
  降りようとしたオレを ヤツの声がひきとめた。

 「…本当に すまなかった…!」

  こんなに 真摯なコイツの声は 初めてだった。

 「ありがとう…!」

  …礼を
  礼なんか 言われる筋合いはない!

  …罵り声は 喉の途中で止まり
  何も言わず きびすを返し エントランスに駆け込んだ。

  部屋に入ったら
  指が…勝手に 京都の電話番号を押して…て

「…オレ…が…」

「え?」

「あのとき…キョーコの笑顔に だまされたふりしてりゃ…まだ…」

「松!」

 突如 おふくろの声が厳しくなった。

「アンタがそんな男やったら キョーコちゃんは やれん!そんなずるい男、あの子にふさわしゅうないし!」

「…!」

「松…。アンタが ちゃんとキョーコちゃんを 行かせてやれる男で ほんまによかった。」

「…おふくろ…?」

「さすが うちの息子や。誇りに思うわ。」

「〜…!」

 おふくろの優しい声に
 ついに 堰が崩れてしまった。

 ほほを 熱いものが流れていく。

 どうにも とまらない…!

「…帰っておいで…松…。」

 受話器の向こうの声が 震えている。

「あんたみたいな かっこつけ…他のどこで 泣けるゆうの?」

「…かあ…さ…ん…」

 いい年をした男が
 母親にむかってみっともなく泣いて…

 さぞかし ぶざまでこっけいなのだろう…と
 わかってはいたが

「アンタは やれるだけのことやったんや。胸をはって 帰っておいで。」

 優しく抱きしめてくれるような…おふくろの声

「アンタやから キョーコちゃん 幸せにする手伝いできたのや。な!」

 どうしても
 涙は止まらなかった…。

 いつまでも…。

Thanks for your Life.
     Thanks for your Happiness.

  勇気をくれた 君の笑顔
  夢を与えてくれた 君の言葉

     君が 僕の全て
     君こそ 僕の生命

 Your smile makes me Happy.

 笑っててほしい いつまでも

 君の笑顔が 僕の幸せ

 君が笑ってくれるなら 僕はなんでもしてみせる


イラスト「Silent Night」(『HEAVEN'S GARDEN』様より)
画像

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コメント(3件)

内 容 ニックネーム/日時
松君へ
>「松…。アンタが ちゃんとキョーコちゃんを 行かせてやれる男で ほんまによかった。」

本当にそう思うよ?
よく頑張りました・・・・


ともにょ
2008/05/31 10:06
女将さんへ
>「松…。アンタが ちゃんとキョーコちゃんを 行かせてやれる男で ほんまによかった。」

息子にそう言ってあげられるお母さんで良かったです・・・。
安心しました。

春葵
2008/05/31 12:27
ありがとうございます!
 お二人の思いやりあふれるお言葉に 本当に涙が出ました。
 お心優しい読者様に恵まれて すごく幸せです。;−;
ことりん
2008/06/15 07:00

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